★月刊・沈黙の兵器 第00004号 '05/5/30 ★

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前号のイントロで、原則 “耕さない・肥料をやらない・除草しない” という筆者の畑の「雑草の制御」について述べましたが、具体的なイメージをお伝えできなかったと思いますので、今回は写真付きでお届けします:



雑草に埋もれ?生育するトマト (殆どホッタラカシ!)
 
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クローバで他の雑草を制御したホッタラカシのイチゴ畑
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背の低い雑草を意図的に繁茂させホッタラカシを実現
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何年もホッタラカシなのに、収穫たっぷりのミョウガ畑
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もちろん全てが、うまく思い通りに行っているわけではありません。
雑草に負けて、“おさらば”するものは半分以上かも……。
でも「仲良しさん」の雑草とうまくマッチできれば、「共生」できるようです…。

イントロが長くなりました。

■■■銀行の特殊性に気付け!(2) ■■■

★★ 「信用創造」 と「キャッチボール・モデル」 ★★

西洋では、「紙幣」は金細工師によるゴールドの預り証から発展した、と先月号で述べました。
 あるとき、顧客が金細工師からゴールドの現物を引き出しても、ゴールドは廻り回って結局、別の金細工師たちにゴールドを預けるのであれば、全体としてどうなったでしょう? (ゴールドのようなハードウェアが「廻り回って」返る現象を、「物理的キャッチボール」と呼ぶことにします)
 金細工師たちが全体で保有する「ゴールドの在庫総量」は、減少しませんでしたね。
  そこで顧客から預かったゴールドを、資金を必要とする人に貸し出しました。その結果、
   預り証の総額 > ゴールドの在庫総量
といった“詐欺状態”が生じたわけです。やがてその詐欺はさらにエスカレートして、預り証そのものを貸し出すようになったのでしたね。
 これは別の観点からみると、顧客が金細工師たちを「信用」した結果、社会全体では「新たな購買力が創造」されたわけで、
   信用創造量 = 預り証の総額 − ゴールドの在庫総量
と考えることができます。「無」から通貨が創造されたのです。

しかし“詐欺状態”が大きくなりすぎると、実際のゴールド保有量との関係の“秘密”がバレそうになりました。そこで「ニクソンショック」により、金本位制を廃止したのでしたね。これにより、おカネは単なる「紙切れ」になりました。
 さらにコンピュータが発達すると、現代では、おカネは単なる「数字」となったわけです。数字は、抽象的な存在であり、しかも瞬時に送金することができます。(これを「抽象的(情報化された)キャッチボール」と呼ぶことにします)
 ではこのことで、どのような変化が起きたか?、次のモデルによって考えて見ましょう:



「キャッチボールモデル」による、銀行の「信用創造」
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★モデル1)
解りやすさのため、この世に、A銀行とB銀行の2行だけがあるとしよう。
またそれら銀行の預金量は、それぞれ10億円あるとする。ここで、
 ・A銀行がX氏に1億円を融資して、X氏は売手のY氏に支払った。
  Y氏はB銀行にそれを預けた。(銀行振込なら直接AからBに)
   → ここでA銀行の預金量は9億円、B銀行は11億円となる。
     (実はここに問題があるのだが、後述)
 ・一方、B銀行はN氏に1億円を融資、N氏は売手M氏に支払った。
  M氏はA銀行にそれを預けた。(銀行振込なら直接BからAに)
   → これでA銀行とB銀行の預金量は、各々10億円に回復
     (実はここに問題があるのだが、後述)
では、X氏とN氏へ融資した計2億円は、どこから来たのか ?!
彼らは融資された2億円に対して、利息を払う義務があるのに…?。

★モデル2)
さらに発展して、A銀行とB銀行の2行だけがあって預金量は、
それぞれ10億円ある
、とするまでは同じ。ここで、
 ・A銀行がX氏に100億円を融資して、X氏は売手のY氏に支払った。
  Y氏はB銀行にそれを預けた。(銀行振込なら直接AからBに)
   → A銀行の預金量はマイナス90億円、B銀行は110億円となる。
     (実はここに問題があるのだが、後述)
 ・一方B銀行はN氏に100億円を融資、N氏は売手M氏に支払った。
  M氏はA銀行にそれを預けた。(銀行振込なら直接BからAに)
   → これでA銀行とB銀行の預金量は、各々10億円に回復
     (実はここに問題があるのだが、後述)
では、X氏とN氏へ融資した計200億円は、どこから来たのか ?!
彼らは融資された200億円に対して、利息を払う義務があるのに…?。

さらなる疑問は、モデル1)なら預金量の範囲だからまだ理解できるが、モデル2)の場合、預金量の10倍もの融資したって?…、どうしてそんなことが可能なのか?…。でも確かに、B銀行とキャッチボールしたことによって、少なくともこのケースでは帳尻りはあっているように見えるが?…。このケースが特殊なのか?
 特殊かどうかは別にして、確かに、預金量は減少せずに融資が可能な、上記モデルのようなケースは考えられるではないか…?。これはどうもあの金細工師たちの、ゴールドの在庫総量が減少しなかったモデルに似ているようだ…。物理的キャッチボールから抽象的キャッチボールへと発展した点があるにしても……。

  では銀行は、預金が無くても貸し出せるのか ?!
 答えは、99%が「YES」で、1%が「NO」、である。
 というのも、わが国では実際には約1%の準備預金を中央銀行(つまり日銀)にしなければならないという決まりがあるから、まったく元手無しで融資することはできないからだ。
 でもこれは逆にいえば、融資により、元手の約99倍の信用創造ができる!、ということだ。

では銀行のバランスシートはどうなったのか?

100億円貸し出した銀行のバランスシートは一気に大きくなる!
(融資直前の預金量が10億円の場合)
資産(貸出等)
負債(預金)
110億円
110億円


実はもともと預金量が10億円であったA銀行が、X氏に100億円の貸出をすると、バランスシート(=決算書)は上の表のように、一気に大きくなる!、のである。え?え?、キツネにつままれた気になるではないか!
 もう少し順をおって説明をすると、X氏は100億円の融資を受け、X氏の預金口座に100億円が記載される(この時点では上の表は納得ですよね)。それをY氏の取引銀行であるB銀行に送金した。ところが一方、ほぼ同時進行で、N氏・M氏ルートで100億円が返ってきた……。お分かり頂けるだろうか?。ここがキャッチボールたる所以である。

そんなにタイミング良く100億円が返ってくるなんて稀れなんじゃないの?、もし返ってこなかったらどうしたらいいの?……、なんて心配されるかもしれません。確かにその心配はわかる。でも考えてみてください。100億円といっても、X氏のために現金の札束を用意する必要もなく、ましてやゴールドの現物も必要なく、単なる数字のやりとりにすぎないのですぞ。数字を貸し出しただけ!、なのである。
 では、B銀行へ送金した100億円はどうしたらいいの?。ほんとにほんとに、B銀行からキャッチボールによる資金が返ってこなかったらどうしたらいいの?。まぁいくら心配性の方でも、B銀行からくるキャッチボールが、全体としてまったくのゼロとは思っていないでしょうが、たとえ最悪ゼロとしても、X氏は今後、毎月返済をしてくれるのですよ。しかも利息付きでね。
  一方、最悪の場合におけるB銀行への送金債務を履行するためには、銀行間での融資(=コール市場、これも抽象的キャッチボールの一形態と見做すことが可能だが…)や日銀からの融資(日銀は直接に信用創造することが可能だが…)を活用すれば良い。そこから調達できる資金への利息(日銀融資の場合は公定歩合)は、X氏から頂戴する利息よりもはるかに低金利であるため、いくらでも帳尻りをあわせることができるので、ご安心下さいね?。
 もっともX氏が経営破綻したりして返済不能となれば、それは不良債権となって困った問題が発生するので要注意である。ご融資は慎重にお願いしますね…。(ただしもともと無に近い状態から創造されたおカネですから、こうした不良債権も うまく御破算にする方法があると筆者は考えているのですが、話がさらに複雑化するので、ここでは割愛します)

以上、銀行は(普通の銀行であっても)、マクロ経済からみれば、融資を通じて信用創造が可能であることを考察した。
  にもかかわらず、銀行は、預金者から預かったおカネを融資して利ザヤを稼ぐという、単なる「金融仲介屋」ではない!、という特殊性に、あまりに多くの人(プロの銀行家や有名エコノミストでさえ)が気付いていないという現状は、とても残念なことであり、また危険なことでもある。
 より詳細を考えてみられたい方は、推薦図書:
  「謎解き! 平成大不況」 (PHP研究所) → Amazon当該書籍にリンク

 ここで後日の別テーマの準備のため、上記書籍から次の箇所を引用して、株式市場との比較をしておきたい。
(引用開始)
  『
 銀行を「金融仲介機能」と捉える新古典派のエコノミストのなかには、お金を集めたい企業からすれば、銀行融資も株式や社債の市場も同じである。だから証券市場は銀行融資に取って代わることが可能だ、という見方をしている人が少なくありません。
  …………
 しかし経済全体の観点から見ると、銀行融資と、株式や債券を買ってもらってお金を集めるのとでは、決定的な違いが存在します。
 銀行から融資を受けた場合、先にも述べたように、経済全体の「おカネの量」は増えます。したがって、経済全体の取引金額も増え、経済の拡大に寄与します。これに対して、証券市場で資金を調達した場合には、……投資家名義の口座から企業の口座へと、通帳上でお金が移るだけでしかないのです。(これをゼロサムゲームという)
  』
(引用終了)



★★ 「無税国家モデル」 ★★

この「無税国家モデル」の基本コンセプトは、当メルマガの第2号と第3号の内容とリンクしていますので、バックナンバーをぜひ読み返して頂ければ幸いである。
 第2号(日銀ではなく、国会が通貨を発行すれば、国債発行が不要):
 http://www.geocities.jp/akion200104/melma/backno-00002.htm
 第3号(中央銀行と通貨は、「詐欺」をその起源としている):
 http://www.geocities.jp/akion200104/melma/backno-00003.htm

以上をご理解いただけておれば、
 日銀ではなく、国会が通貨を発行して、一般国民は原則無税
という、通常では非常識なアイデアも、むしろ当然と受け止めてもらえることを期待します。

無税国家モデルのコンセプトを次図に示します。


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★現状(図の左)
 国民から徴収する税金よりも、国家事業の方が大きいから、大きな負債を抱えて増大するばかり。
 このままでは増税もやむを得ない。通貨は、日銀が発行している。
 (注: 図ではシンボリックに現金紙幣で描写しているが、そうではなく、信用創造を指す)

★無税国家モデル(図の右)
 日銀を廃止して、国民の代表としての国会が通貨を発行(信用創造)する。
 一般国民は、原則無税とする。

この「無税国家論」を説明すると通常、「そんな事したらインフレになりますよ!」という反応が返ってくる。
では少しだけ具体的に内容をあげてみますと、
 ・通貨発行量はGDPの約5%とする(つまり約500兆円×5%=25兆円)
 ・年収3千万円未満の国民の所得税は無税!(金持ちは有税)
 ・消費税は廃止する
(以上でうまく絵を描けるのですが、詳細は後日に)

GDPの5%程度の通貨発行量であれば、年5%程度のインフレになる。(!?)
 このため例えば、100万円を持っていた人の場合は95万円に目減りする。
 この目減りした5万円が、実は税金ともいえる
 これはNHKと民放の違いに似ている。NHKは有料、民放は無料に思えるが、実は皆が買う製品に広告費としてオンされている。
 消費税が廃止されて消費を刺激し、5%という適度なインフレと円安は輸出企業を助けるだろう。

……いかがでしょう?。実現しようと思えば実現可能なモデルでしょう?
 問題は、年5%程度のインフレですむのか?、とのご心配です。
 実は、通貨を発行量だけでなく、その購買力をどの分野に配分するかが重要で、それによりインフレになるか、あるいは全くならないかが決定されると筆者は考えています。この件に関しても後日のテーマとしましょう。

なおPHP研究所が同じく「無税国家論」を論じています。しかしその内容は、多くを民営化して小さな政府にしたら、政府歳出を最小限にできるから、無税に近いことが実現できるというもので、通貨発行は日銀のまんまなのです。これには別の意図を感じます。
 筆者のポイントは、日銀を廃止して、通貨発行権を国民(つまり国会)が手にしよう、という点です。

ちなみに、日銀は国の機関であると思う人がいたら、認識を改めていただきたい。
 1889年に明治憲法発布、1885年に日本初の内閣が誕生、日銀はそれ以前の1882年に、ある欧州貴族の出資により資本金1億円で設立された民間組織なのです。1997年頃までは新聞の株式欄にも日銀株が掲載されていました。

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