★月刊・沈黙の兵器 第00003号 '05/4/27 ★

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

温かくなってきましたね!
 筆者の「畑」では、チューリップはもとより、白菜の黄色い花!・大根の白い花!・イチゴの白い花!・そらまめの白黒ツートンの花!などが満開です。なかでも白菜の花は、背丈が1.3メートルにもなります。空に向けて放射状に大きく茎を伸ばして咲いている姿は、とても壮観です。
 ただし、そんないいものばかりなら良いのですが、雑草がこれからたいへんです。実は、耕さない・肥料をやらない・除草しないをモットーとする私の農法のなかで、いちばん難しいのが、除草しない。これからの雑草の制御がたいへんなのです。

さて、第1号・第2号と「おカネ」にまつわる話をしてきました。今回はもっと別の話題を、とも思ったのですが、中途半端にこの話を中断してもナンなんで、もう少しおカネの問題を掘り下げてお話しすることにします。
 お断りしておきますが、今から述べる内容は、大学の経済学や歴史学では教えない内容ですので、通常の経済や歴史を学んだ方は特に、先入観を捨ててもらわなくてはなりません。

■■■銀行の特殊性に気付け!(1) ■■■

★★ 「紙幣の起源」 「預り証モデル」 ★★

現代社会は「西洋文明」が世界を席捲し、特に経済や金融ではダントツのパワーを有していますから、ここでは ヨーロッパでの紙幣の起源についてお話します。(歴史的には最初の紙幣は中国で使われましたが)
 過去のヨーロッパでも、おカネつまり通貨は、金貨などの貴金属が主流でした。貴金属は自由に創り出すことはできません。しかし中世ヨーロッパの支配者である絶対君主は、経済をコントロールするためにゴールドを創ろうと試みました。「錬金術」です。そのおかげで化学の礎は発展しましたが、ご存知のように本来の目的は達成できませんでした。
 ところが実質的に、その「錬金術」を成功させたグループがいるのです!
 当時の両替商や金細工師のグループです。

次の話をじっくりと考えてみてください:
 金貨など貴金属は、重すぎるし、扱いにくいし、持ち歩くには危険です。やがて金持ちの貴族・地主・商人は、その所有するゴールドを、両替商や金細工師に預けるようになりました。彼らは金持ちだし身元もよく知れているし、安全な保管場所をもっているし、要するに信用がおける存在だったのです。金細工師たちはゴールドを預かると、預り証を発行しました。
 そのうち人々は、預り証の更なる便利さに気付きました。買い物のたびにいちいち重たいゴールドを持ち出さなくても、支払先の相手もどうせ金細工師にまた預けるではないか? 金細工師は双方よく知っていたから、この預り証を決済手段として使えばチョー便利ではないか! こうして預り証が「通貨」として使われるようになったのです。

ところがやがて金細工師たちの方も、別の視点からある事に気付いたのです!
 「ではこの在庫のゴールドを、金利を取って資金が必要な人に貸し出したらきっと儲かるぞ!」
 「なんと、我々グループは、秘密で預り証を創りさえすれば、ものを買うことができる!」
 金細工師たちは、在庫のゴールドの所有者ではない。だから真の所有者である顧客に無断でそれを貸し出す行為は横領にあたる。しかも、誰からも預っていない、つまり存在しないゴールドへの預り証を勝手に創るなんて行為は詐欺ではないか。(ゴールドペーパー商法の詐欺で告発された豊田商事事件を思い出して頂きたい)
 これらの行為がもたらす結果は、預り証の総額に相当するゴールドの現物が存在していない、ということだ。
 このために極くたまにではあるが、困ったことが起こった。顧客が何らかの理由で多額の預り証を持ち込んできて、預けていた大量のゴールドの返却を求めるときである。そういう場合には金細工師たちは秘密の連係プレーで協力し合って、ゴールドの現物を融通し合った。実は金細工師たちの手から一時的に離れたそのゴールドも、結局は回りまわって金細工師たちに帰ってくることは明らかだったのである。

貸し金への需要は常にあったので、金細工師たちは次に、預り証そのものを貸し出すことを思いついた。
 このことで3つのことが起こった。第1に、誰にどれだけの購買力を与えることができるかの決定権を握った。第2に、在庫に存在するゴールドよりずっと多くの預り証を発行したのだから、詐欺つまりインチキはさらに大掛かりになり、その秘密性はさらに高まった。そのため彼らは1776年5月1日に、史上最強の秘密結社イルミナティ(そのシンボルは米国1ドル紙幣の裏面に印刷されている)を設立した。第3に、銀行業が誕生した。
  こうして彼ら金細工師たちは、実質的な錬金術に成功したのです。えっ?解りますよね?、ゴールドというハードウェアは創れませんでしたが、それに代わる「紙幣」を創造できる立場になったのですよ!


米国1ドル札にあるイルミナティのシンボル
≪画像が表示されない方はここをクリック≫

銀行家は絶対君主や錬金術師が失敗したことを成し遂げた。通貨を創り出したのである。彼らは賢者の石を手に入れた。そして、その時代の中央銀行になった。
 これは世界史を根底から変える出来事だった。新しい購買力の配分が政府の支配下にはない!、ということを意味したからだ。ヨーロッパの絶対君主は、このインチキを見破れなかった。お人好しにも、銀行家は大量のゴールドをもっているのだと信じた。政府が通貨を必要とし、しかしもう税金を上げられないとなると、銀行家から借りるしかないと考えた。
 皮肉なことに、銀行家は絶対君主である王がやろうと思えばできることをしただけだった。紙幣の発行だ。銀行家は国家の政策に対する絶大な影響力を手に入れた。まもなく、誰が国を支配しているのかわからなくなった。旧約聖書には、借り手は貸し手のしもべとなると書いてある。王はしもべとなった。
(この節は、ヴェルナー著「円の支配者」の表現を一部引用または参考にしています)
 ※推薦図書「円の支配者」(草思社)は、
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794210574/250-9023892-3901055

彼らの活動は超国家的である。特定の国家に縛られることは無い。それどころか、あるときは国家間の戦争までも画策したり、彼らの気に入らない君主は革命(フランス革命など)を起こしてこれを打倒した。こうして彼らは、彼らにとっての都合の良い社会システム(=世界統一通貨による世界金融支配)を構築しようとするまでに、強大な力を手に入れてしまったのです。
 ※推薦図書: 広瀬隆著「赤い楯」(集英社文庫)は、
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087483827/250-9023892-3901055

後世の歴史家は現代を、「世界金融帝国時代」と呼ぶことでしょう。


★★ニクソンショック麻雀モデル ★★

戦後の最大事件の1つに、1971年8月15日の【ニクソンショック】がある。
  それまで「紙幣」という紙キレであっても、一定量の金(ゴールド)と交換できるという前提が、その価値を裏付けていました。もともと「預り証」が欧米の紙幣の起源ですから、当然ですね。
  だが当時のアメリカ大統領ニクソンが、『これからは(世界通貨でもある)ドルの、ゴールドとの交換を廃止する』、と発表し、ショックは世界を駆け巡ったのである。いわゆる金本位制の廃止です。
 前項の内容をご理解された読者ならお気付きのように、それまで紙幣つまり預り証がゴールドとの交換を前提としていたときですら、ウラではゴールドの現物総量を上回る紙幣が発行されてきたのですから、これはあまりにも「詐欺」がエスカレートして、現物との帳尻りが合わなくなりすぎた結果だということですね。しかもその「詐欺」を糺すどころか、もうこれからは交換を廃止するんだっ!と、逆に開き直ってしまったわけです。
  いずれにせよゴールドとの交換という「歯止め」が無くなってしまって、これ以降、通貨は完全に【単なる紙キレ】となったのです!(コンピュータの発達した現在では、紙キレどころか数字!に過ぎないが、この話は次回に)

 通貨が紙キレという前提を頭に入れて、次の【麻雀モデルを考えてみてください:

 この世に、Aさんを含む4人しか世界人口がないと仮定しよう。4人で麻雀をした。Aさんは麻雀がとても弱くて、毎日何十万円もカモられる。累積「赤字」は天文学的だ。しかしAさんは全然困らない。それはどういう場合に可能か?
 答えは、Aさんが銀行家で、皆んなが「Aさん銀行のおカネ」を使っている場合であり、かつ、他の3人がそれを容認した場合である。容認する理由としては、お人好しだけど頭が悪くてその“カラクリ”が理解できないJさんの場合とか、ウラでAさんと結託している黒幕的存在のEさんとかの場合である。(注: 人物のイニシャルには実在する国名の英語の頭文字が使われています)

★次回はこの続きとして、
   銀行の特殊性に気付け!(2)
  「信用創造」 と 「キャッチボールモデル
  および「無税国家モデル
をお届けします。

/E