★月刊・沈黙の兵器 第00010号 '05/11/30 ★

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筆者の家には柿の木が3本生えており、今年は特に豊作で、2千個くらいの柿の実がなった。昨年はなぜかほとんど実がならなかったのに、今年は嬉しい悲鳴である。とても食べきれないのでどうしようかと考えていたら、テレビで「柿酢」なるものの存在を知った。しかも作り方がいたって簡単である。さっそく作ってみることにした。しかし、発酵が進んで酢になるまでには仕込みから数ヶ月はかかるそうなので、出来上がりは来年の春以降になるようだ。今から楽しみである。

■■■ 耕さない農法(2) ■■■

先号で、今回は耕さない農法の「欠点」を書くと申しましたが、大事なことを書き忘れていたので、そちらを書きます。
 大事なこととは、「環境問題」です。

★★ 農業の環境問題 ★★

ある人に耕さない農法のことを言ったところ、「ああ、最近は不耕起農法が流行ってますね」と言われ、言葉を失った。不耕起農法を単なる農業「技術」と受け止めたようである。
 まぁその気持ちも分からなくはないが、不耕起農法は、西洋文明に汚染された現代を救う「哲学」であると筆者は受け止めている。

さて「汚染」、ここでは環境汚染をとりあげよう。そのなかでも何がいちばん深刻だろうか?
 それは、環境を語るうえで史上最悪の毒性をもつと言われるダイオキシンである。
 ダイオキシンは、生体に入ると活性酸素を発生させる強力な要因となる。
 活性酸素は、ほとんどの病気や奇形の原因となる。

では、そのダイオキシンの主な発生源はどこだろうか?
 かつて、ゴミの焼却場が主犯とされていた。
 いや現在でも、ほとんどの人がそう思っているのではないだろうか?
 では、次の新聞記事は何を意味するのだろうか?

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どこの新聞だったか(たぶん朝日新聞)、いつの新聞だったかは残念ながらウッカリ記録がないが、たしか99年ころの記事だったように思う。ダイオキシンの焼却場主犯説が華々しいかったころの、2年ほどあとだったように記憶している。
 内容は(読めば分かることだが)、廃棄物焼却場の近くに住んでいる人と、遠くに住んでいる人の血液中のダイオキシン類濃度に有意な差がないことが、厚生省の研究班の調査からわかったのである。一方、焼却場からダイオキシンが発生しているのは明らかだ。可能性として次の2つが考えられる。
 1)焼却場から発生したダイオキシンが空気中をほとんど真上に上昇し、高空から日本全国に均一に拡散している。
 2)より大きなダイオキシンの発生源が他にもある。しかもその発生源は焼却場よりも一般的なものでなければならない。

前者1)の可能性は否定できないが、逆に確証もない。
 では後者2)の可能性、つまり他に有力なダイオキシンの発生源を考えてみよう。
 この問題に答えられる良書を4冊ほど紹介する:

画像が表示されない方は右をクリック: ≪図1≫ ≪図2≫ ≪図3≫ ≪図4≫

(次の書籍名をクリックすると関連サイトへ)
 ・ 「環境ホルモンの元凶は除草剤だった」 浅井敏雄 (著)
 ・ 「除草剤の脅威」 久慈力 (著)
 ・ 「農薬と環境ホルモン」 河村宏・反農薬東京グループ編著
 ・ 「よくわかるダイオキシン汚染」 宮田秀明 (著)

つまりダイオキシン発生の主犯は、「除草剤」あるいは「農薬」が原因である可能性がきわめて高いというわけである。日本は世界一の除草剤の使用国だ。除草剤は、ベトナム戦争の枯葉作戦で使われた枯葉剤と基本的に同じものであり、放射性物質と並ぶ最大級の環境汚染物質である。その驚くべき遺伝毒性、発癌性、催奇形性は、あのベトナムの双生児「ベトちゃんドクちゃん」などでも有名だ。
 ほとんどの国民は、毎日の食事で農薬付きの作物を食べている。あるいは河川を介して水道水や魚介類に入る。現に川や近海の魚介類に奇形が多く発生している話を聞いたことがあるではないか。
 以上のように考えれば、全国均一にダイオキシン汚染が拡がっていることを示唆する先ほどの新聞記事の内容を説明できるのではないか?
 焼却場のダイオキシン発生量なんか、全体からみたら無視できるくらいに小さいということだ。

実はこのことは国も把握しているようで、特にダイオキシン発生が強い除草剤PCPとCNPは最近では使用されていない。
 しかしより毒性が低いものが使用されているからといって、使っていることに変わりはない。いや現代農法では使わざるを得ないのだ。もし使わなければ、田畑は雑草だらけとなって、とても収穫どころではないからだ。

ではその除草剤あるいは農薬がどのように環境に拡がっているのか、ビジュアルに分かる衝撃の写真をお見せしよう。
 これは田植え時期(5月頃)の滋賀県びわ湖畔の航空写真である。

≪画像が表示されない方はここをクリック≫

(提供: 琵琶湖研究所

これほどの「汚水」がびわ湖に大量に流れ込んでいるのである。
 これらはすべて「耕した結果」である。耕したためにやわらかくなった土がこうやって流出しているのである。(当り前だが不耕起農法なら、耕さないのであるからこうはならない)
 しかもその流出した田圃の泥には、除草剤や農薬が混入しているのである。そしてこのびわ湖の水を、京都や大阪の人々は飲んでいるのである。ただしもちろん水道水には厳しい基準があるから、安全な水になっているとは信じたい。
 この流出泥に含まれるものに化学肥料もあるわけで、現代農学理論による三大肥料つまり窒素・リン酸・カリが入っている。ひところ家庭用の洗剤を、環境への負荷が少ない「無リン洗剤」にしましょうとヤカマシく騒いでいたことがあったが、上写真のようにリン酸を含む大量の「農業廃水」が発生しているのであるから、こっちを何とかしないといけないではないか。
 びわ湖の赤潮は、こうしたリン酸分などがもとで湖水が富栄養化し発生すると考えられている(琵琶湖研究所)。

上写真は5月の田植え時期の写真だと説明したが、実は夏の時期にも同じような光景が数回ある。
 というのも、前号で述べたように現代農法および有機農法は、耕すが故に土中で有機物が分解され、そのためメタンガスなどが発生して根腐れの原因となる。夏の時期は特にそうなりやすい。そこでそのメタンガス対策として「間断潅水」といって、夏の時期に何回か田圃から水を抜くことが行なわれる。つまり地面のガス抜きである。
 しかしこの行為は、せっかく田圃に棲息する生物に大きな打撃を与えるばかりか、田圃に散布した除草剤・農薬・化学肥料が直接環境に流出することになるのである。

かつて田圃の水は、農民が喉が渇けば飲んでいたほどに清涼であった。(一方、有機農法だから手間が大変だった)
 しかし現在、喉が乾いたからといって田圃の水を飲む農民がどれだけいるであろうか? 自ら農薬や除草剤を撒いているのであるから、恐ろしくてそんな自殺行為はあり得ないだろう。
 ダイオキシン発生の環境破壊をまねいている現代農法の除草剤・農薬・化学肥料をストップさせなければ、取り返しのつかない「沈黙の春」がやってくるのではないだろうか?

★★ 不耕起農法が環境問題を解決 ★★

前号で説明したように、不耕起農法では除草剤・農薬・化学肥料は不要である。いや不要どころか、田圃の生態系を破壊する忌まわしいものである。
 不耕起農法では、根腐れの原因となるガスが発生しないから間断潅水も不要である。いや不要どころか、田圃の生態系を維持するために収穫まで一度も水を抜いてもらっては困る。それどころか、本当は冬期も潅水したままが理想なのだ。
 不耕起農法を普及させなければならない。有機農法は生産性に問題があったため現代農法が普及してきたが、不耕起農法は環境問題を解決するだけでなく、生産性をも現代農法を凌駕する。
 不耕起農法を広めなければならない。

★★ おわりに ★★

 次号こそ、不耕起農法の「欠点」を書く予定です。


「月刊・沈黙の兵器」
★まぐまぐ!サイト:  http://www.mag2.com/m/0000150947.html
★発行者のサイト:  http://www.geocities.jp/akion200104/
★執筆者のサイト:  http://www.geocities.jp/untilled/ (←バックナンバーが見やすいよ)

■次号の予定:「耕さない農法(3)」

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